ラララ進化論

馬のブログです

Joshikousei drive a car.

この前仮免試験があった。
結果は合格、順風満帆である。
しかし、そんなことはどうでもよい。
私はあれからある光景が脳裏に焼きついて離れないのだ……


技能試験をトップバッターで済ませた私は見てもいない学科教本をパラパラとめくっていた。
試験を受ける者は当然運転手と、それとは別に後部座席に座って他の受験者の運転に付き合う役割を果たさねばならない。
最初に試験を終えた私は、最終受験者の運転に同情しなければならなかった。
正直、煩わしいという思いが付きまとって離れなかった。
「次、あなたの番です」
運転を終え、戻ってきた女性が私に告げた。
私は教本を半開きにしたまま、寒空のもと試験場へ向かった。

私が乗ったのを確認すると、教官は試験の開始を運転手に伝える。
運転手の女性は緊張しているのか、肩に力が入っているようだった。
私は不快な視線を彼女に注がぬよう、窓の外へと目を移す。
「ウインカー、出し忘れてるよ」
「は、はい」
慣らし運転が始まってからも緊張の色は少しずつ濃くなっていく。
そんな彼女に視線を移すと、私はあることに気がついた。




彼女、高校の制服を着ている。


最初は些細な違和感だった。もうすぐ卒業式だという高校生が免許を取ろうとしていても、まったく不思議ではない。


しかし、しかしだ。
なぜ制服を着てきたんだ?


その日は休日、華の日曜日である。
実際高校生らしき受験者も皆、私服である。
そんな中、彼女は制服で来たのだ。
見目形も整った女の子である。私服の一着や二着、持っていてもおかしくない。


……これは反逆である。
成人の儀とも呼べる試験に幼若の証であるセーラー服で乗り込んでくるなど、国家に対する弑逆である。

そしてその場に私は立ち会っている。
こんな機会、この先の長い人生で再び巡りあえることなどないだろう。
私は湧き上がる興奮を抑え、彼女の不器用な戦いを見守る。
そして、私の言明できぬ思いはふと浮かんだ一文に全て宿った。



「Joshikousei drive a car.」


私は心でそう呟き、試験場を後にした。


driveに三単現のsを付け忘れたのに気がついたのはその2日後のことだった。